この記事は、2025年も「ものづくり補助金」、「小規模事業者持続化補助金」が実施されることを前提として、その準備について解説するものです。

記事は記載時点の情報に基づく筆者の私見です。筆者および補助金ナビ運営者は、ものづくり補助金および小規模事業者持続化補助金の2025年の実施や、記事内容の信憑性等について、何ら保証するものでも責任を持つものでもございません。補助金のご検討、応募申請等のご判断は、皆様のご自身の責任でお願いします。

YouTube | 補助金ナビ 2025年に補助金を獲得する為の準備講座「9.採択確率を高める事業計画書作成方法とは」

補助金応募申請時の採択確率を高めるためには、申請する事業計画の内容が、
 ・補助金の求める基本的要件、事業者および事業の要件に完全に合致していること。
 ・公募要領記載の「審査項目」や「申請書に書くべきこと」に、洩れなく、かつ、的確に答えていること。
が必要です。

(詳細は、この準備講座の、4)~6)に記載をしています。)

これを実現するために、事業計画作成を以下の順序で進めることを推奨しています。

採択確率を高めるための事業者計画作成方法

① 自社の事業計画および設備投資等計画の概要作成
② 補助事業の目的および要件の確認
③ ①と②の整合性確認、およびすり合わせ
④ 審査項目、書くべきことの確認
⑤ 骨子作成
⑥ 骨子段階での評価、ブラッシュアップ
⑦ 文章化

それでは、それぞれについて解説をしてゆきます。

①自社の事業計画および設備投資等計画の概要作成

「自社の事業計画および設備投資等計画の概要作成」は、自社の計画作成ですので解説は不要と思いますが、この段階では、詳細計画を作るのではなく、あくまでも以下の概要レベルとします。

・目的
・成果目標、達成時期
・投資金額、投資対象
・活用する自社の強み
・市場規模、成長性

②補助事業の目的および要件の確認

補助事業には必ず目的があり、目的を実現する為に対象事業等の要件が定められていますので、この2つは密接に関連しています。先ずは、目的と要件を理解することが大切です。

○ものづくり補助金の目的・要件の確認
・2024年実施「ものづくり補助金」の目的(2023年も同様)
 中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援します。

ポイントを抜粋すると、
ものづくり補助金は、
 ・「革新的な製品・サービスの開発」あるいは「生産プロセス等の省力化を行い」
 ・「生産性を向上させる」ことにあり、
 ・その為の「設備投資等を支援」
を行うとされています。

【製品・サービス高付加価値化枠、対象事業の要件】

・通常類型:
革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援

・成長分野進出類型(DX・GX):
今後成長が見込まれる分野(DX・GX)に資する革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援

また、以下の注釈が付いています。
※革新的な製品・サービス開発とは、顧客に新たな価値を提供することを目的に、導入した設備・システムを用いて、自社の技術力等を活かして製品・サービスを開発することをいいます。単に設備・システムを導入するにとどまり、製品・サービスの開発を伴わないものは該当しません。また、業種ごとに同業の中小企業(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)において既に相当程度普及している製品・サービスの開発は該当しません。

要するに、「製品・サービス高付加価値化枠」では、「革新的な新たな製品・サービスを開発する」ことが必要です。

【省力化(オーダーメイド)枠、対象事業の要件】

人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援
※デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)とは、ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム(ロボットシステム等)のことをいいます。デジタル技術等を活用せず、単に機械装置等を導入する事業については、本事業の対象とはなりません。

一方で、「省力化(オーダーメイド)枠」では、「デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化」を実現することが求められています。

○小規模事業者持続化補助金の目的・要件の確認

・2024年実施「小規模事業者持続化補助金」の目的(2023年も同様)
 小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するために取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とします。

 本補助金事業は、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓等の取組や、 その取組 と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。

この文章から重要な点を抜き出すと以下の通りです。

「小規模事業者持続化補助金は、
・「小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図る」ことを目的とし
・「持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓等の取組や、その取組と併せて行う業務効率化の取組を支援する」ために
・「それに要する経費の一部を補助」
するものです。

【2024年実施小規模事業者持続化補助金の要件】
補助対象となる事業は、次の(1)か ら(4)に 掲げる要件をいずれも満たす事業であることとします。
(1)策定した「経営計画」に基づいて実施する、販路開拓等のための取組 であること。 あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること
(2)商工会議所・商工会の支援を受けながら取り組む事業であること
(3)以下に該当する事業を行うものではないこと
 ・同一内容の事業について、国が助成する他の制度と同一又は類似内容の事業
 ・本事業の終了後、概ね1年以内に売上げにつながることが見込まれない事業
 ・事業内容が射幸心をそそるおそれがあること、または公の秩序もしくは善良の風俗を害することとなるおそれがあるもの、公的な支援を行うことが適当でないと認められるもの
(4)補助事業実施期間内に補助事業が終了すること

小規模事業者持続化補助金の要件の中で、特に注意をすべき点は、
 ・「販路開拓等のための取組」
 ・「事業の終了後、概ね1年以内に売上げにつながる」
ことです。
ですから、研究開発や、すぐには売上につながらない取組は対象になりません。

この、補助金の目的・要件を正しく理解することは非常に重要です。また、実施年度のよって微妙に変更されてきていますので、閣議決定の段階から発表される補助金の目的・要件には注意が必要です。

その上で、補助金の採択を得るためには、自社の事業計画を、申請する補助金の目的・要件と如何に適合するような計画にできるか、申請書の記載により適合することを説明できるかという点がとても重要です。

③「自社の事業計画、設備投資等計画」と、「補助事業の目的および要件」のすり合わせ

 自社の計画が、補助金の目的・要件と合致することを1つ1つ確認してゆく必要があります。ご自身の勝手な思い込みで、目的や要件を、都合の良いように解釈しても駄目です。

  自社の計画が、目的・要件で求められている各ポイントと、何故、合致するのかを、証拠を示して第三者に説明できることが必要です。合致しないと思われる場合には、事業計画を深堀りして、合致点を見出すことも必要です。

 ここで確認した内容を、①で作成した事業計画書の概要に「補助金の目的・要件との合致点」として、追記しましょう。

○「自社の事業計画、設備投資等計画」と、「補助事業の目的および要件」のすり合わせの例

 例えば、機械装置などの部品を受注製造等をしている事業者が受注製造品の納期短縮や精度向上のための新たな高性能の市販の機械装置導入を計画し、ものづくり補助金を申請をしたいと考えた場合、目的・要件に合致するでしょうか。

  この事業計画は、ものづくり補助金の目的の、「生産プロセス等の省力化」および「生産性の向上」に該当するように思われます。
次に、要件との合致ですが、「製品・サービス高付加価値化枠」では、「新たな製品・サービスを開発する」ことが必要ですので、該当しないように思われます。

 また、「省力化(オーダーメイド)枠」はどうでしょうか。こちらの要件は、「デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化」の実現ですので、単なる市販の機械装置の導入では該当しません。

では、この事業者は、ものづくり補助金の申請は諦めるべきなのでしょうか。

もう一度、自社の事業計画を良く確認してみましょう。

「受注製造品の納期短縮」や「精度向上」が、地域の他の事業が行っていないような高度なレベルなものであるのであれば、納期短縮は、これまでとは異なる新たな「革新的な新たなサービス」と考えられないでしょうか。また、同様に、従来品に比べて精度が極めて高い製品は、従来の製造品とは異なる「革新的な新商品」ということができるのではないでしょうか。

 そうであれば、「製品・サービス高付加価値化枠」の要件を満たす可能性があります。

公募要領の要件の注記に以下の通り記載されています。

革新的な製品・サービス開発とは、
 「顧客に新たな価値を提供」することを目的に、導入した設備・システムを用いて、「自社の技術力等を活かして製品・サービスを開発する」ことをいいます。

単に設備・システムを導入するにとどまり、製品・サービスの開発を伴わないものは該当しません。

また、業種ごとに同業の中小企業(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)において既に相当程度普及している製品・サービスの開発は該当しません。

と、ありますので、単なる高性能設備の導入にとどまらず、自社に蓄積されたノウハウ・技術力を活用することでこれらの点を満たすことを、事業計画書で具体的に記載してゆく必要がありますので、この点を具体的に検討した上で、「補助金の目的・要件との合致」として、①で作成した事業計画書の概要に追記してゆきましょう、

採択確率を高めるための事業者計画作成方法の「④」以降については、本講座の以下の記事に記載していますので、ご確認ください。

 4)ものづくり補助金2025年公募に向けた準備 1
   
 5)ものづくり補助金2025年公募に向けた準備 2
   
 6)小規模事業者持続化補助金2025年公募に向けた準備   

補助金獲得は目的ではなく、自社の成長、付加価値拡大、生産性向上のための手段の一つです。

その為、事業者自身が中心となった事業計画作りをすることはとても重要です。

また、補助事業は採択後の各種手続きは事業者自身が行うことが必要ですので、支援者や代行業者等に任せると思わぬ躓きとなる可能性があります。

支援者任せにしないことで、コスパの良い支援者活用が可能となり、また、信頼できる支援者を上手に活用することが事業者の成長につながります。

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オフィスマツナガ行政書士事務所(認定経営革新等支援機関)所長・行政書士 松永敏明