省力化投資補助金(一般型)第5回公募が開始されました。現時点では、申請受付開始は2月上旬、公募締切は2月下旬とされています。
事業計画書内容に影響を与えるような変更点がいくつかありますので、申請をお考えの事業者様はご注意いください。主な変更点は以下の通りです。(記載箇所の移動や細かな文章表現の変更は含んでいません。)
給与支給総額要件の変更および従業員数ゼロの場合の扱い変更
○給与支給総額要件の変更
「補助事業要件」の「基本要件」の一つである「給与支給総額」に関する要件が変更されました。給与支給総額に関する要件が削除され、また、1人当たり給与支給総額の年平均成長率の基準数値も変更となりました。第4回と比較すると、以下の通り変更となっています。
第4回:給与支給総額の年平均成長率+2.0%以上、又は1人当たり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加
第5回:1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%(日本銀行が定める「物価安定の目標」+1.5%)以上増加
これに伴い、公募要領や参考書式等の記載が改訂されています。
○従業員数ゼロの場合の扱いの変更
従業員数0人の場合の扱いが変更され、従業員数0人(基準年度及びその算出対象となる各事業年度において、全月分の給与等の支給を受けた従業員がいない場合も含む)の場合は、応募できなくなりました。
第4回:なお、応募申請時から従業員が0人の場合や応募申請時から最終年度まで継続して就業している「同一人」が0人の場合は給与支給総額の目標値を用いることとします。
第5回:なお、応募申請時に従業員数が0名の場合、対象となる給与が存在しないことから本事業には応募できません 。また、従業員がいる場合においても基準年度及び算出対象となる各事業年度において、上記の「対象となる従業員」が0名の場合、本事業には応募できません。
○補助金ナビコメント
⇒ 「給与支給総額」の増加は必ずしも「省力化」の成果とはつながらないこともあることから、要件から削除されたものと思われます。また、1人当たり給与支給総額の年平均成長率の変更については、2025年度の最低賃金の引き上げ幅が大きく、また、都道府県によるバラつきもあることから、過大な賃上げを事業者に求めることを避けるため、全国一律で3.5%以上としたものと考えられます。
また、賃上げが前提の補助金に、従業員数0名の応募申請を認めることは、中小企業全体の賃上げに資することにはならないとされたものと考えられます。
補助率の変更
第4回までは「補助金額が1,500万円を超える部分」は「1/3」となっていた補助率が、1,500万円以下と同等になり、補助金額にかかわらず補助率が一定になりました。
第5回の補助率は以下の通りです。
・中小企業:1/2(最低賃金引き上げに係る補助率引き上げの特例対象の場合は、2/3)
・小規模企業者・小規模事業者 ・再生事業者:2/3
○補助金ナビコメント
⇒ 大型の設備投資を行う事業の補助率を従来より上げることで、設備投資の拡大を支援するものと思われます。
米国の追加関税措置の影響を受けている事業者の審査での考慮
米国の追加関税措置の影響を受けていることが審査において認められた場合は審査にて考慮されます。更に当該事業内容がサプライチェーンの省力化に広く寄与することが期待できる等、関税影響への対策として大きな効果が期待できる場合は審査で考慮されます。
以下のような事例が記載されています。
(例)同一サプライチェーン内の複数の中小企業等が、サプライチェーンを俯瞰する大企業からの省力化に関する助言や支援を受けて事業計画を作成することで、それらが当該サプライチェーンの省力化に広く寄与することが期待できるケース。
○「政策面の審査項目」への追記内容
※追加関税措置の影響を受けており、審査において考慮を希望する事業者(関税影響事業者)について、当該事業内容がサプライチェーンの省力化に広く寄与することが期待できる等、関税影響への対策として大きな効果が期待できる場合は審査で考慮します。
○「事業計画書への記載事項」への追記内容
米国の追加関税措置の影響を受けており審査において考慮を希望する事業者(関税影響事業者)は、必ず【指定様式】事業計画書(関税影響を受けている申請者用)を使用して事業計画書を作成してください。
○「【指定様式】事業計画書(その1・その2)(関税影響を受けている申請者用)」の一般用の「【参考書式】事業計画書(その1・その2)」との相違点
・「(1)事業者情報」に「サプライチェーン俯瞰企業名(任意)」が追加
・多くの項目について、以下の注記が追記
※サプライチェーン上の他社と共通した事業計画、類似の事業計画でも申請が可能です。
※事業計画の独自性や効果について補強したい場合などには、サプライチェーン上の他社への波及効果も含めた記載とすることも可能です。
・以下の記載項目が追加
6. 米国の追加関税措置により影響を受けている事業の現状と課題及び今後の方向性
6-1. 米国の追加関税措置により受けている影響、及び本事業における関税影響への効果に関する具体的内容
6-2. サプライチェーン上の他社の省力化への波及効果(任意)
○「提出書類(任意提出書類)」の追加
・サプライチェーンを俯瞰する企業との取引実績が分かる書類(納品実績等)
・サプライチェーンを俯瞰する企業が、サプライチェーンの省力化に広く寄与する事業計画であると認めることを証する書類
○補助金ナビコメント
⇒ 「米国の追加関税措置により影響」のみならず、申請事業者が属する「サプライチェーン全体の省力化に広く寄与する」計画は、審査において考慮されるとのことですので、関連する事業者様は発注元企業等と連携して積極的に取り組むことをお勧めします。
賃上げ加点の廃止
「賃上げ加点」が廃止されました。
第4回公募にて実施されていました以下の賃上げ加点が廃止されました。
・事業計画期間了時点における給与支給総額の年平均成長率4.0%以上増加する計画を有すること及び、事業場内最低賃金を毎年3月に事業実施都道府県における最低賃金より+40円以上の水準を満たすことを目標とし、事務局に誓約している事業者
これに伴い、「賃上げが効果報告において未達の場合の措置(今後の補助金応募時の大幅減点)」の記載も削除されました。
○補助金ナビコメント
⇒ 中小事業者に基本要件以上の賃上げを求めるのは現実的ではないという意見が多くあり、それが反映されたものと思われます。
その他の改訂
○審査項目/口頭審査の変更等
【計画面審査】への追記
・補助事業実施のための社内外の体制(人材、事務処理能力、専門的知見等)や最近の財務状況、サイバーセキュリティ対策の状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか。
⇒「サイバーセキュリティ対策の状況等」が追加されました。
【口頭審査】
・審査内容に関する記載内容の変更
適切に審査を行うため、事業計画書の内容を補完するための質問をしたり、また本補助金申請にあたっての意思決定の背景等、事業計画書に記載のない内容について伺うこともあります。口頭審査の対象者については、事業計画書、口頭審査の内容を踏まえ総合的に事業計画を審査いたします。
・審査方法に関する記載内容の変更
「役員または従業員(申請時に申請担当者欄に記載している者に限る)、1名に限り同席を認めます。」と「同席者は1名限定」が追記
○システム構築/システム関連費用等についての記載の変更
「補助事業要件」の「その他要件」の一つであった「外部SIerを活用する場合の保守・メンテナンス契約締結」に代わり、「システム構築費を計上する場合の保守・メンテナンス契約締結」が「善管注意義務」として記載されました。
第4回(その他要件):外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を中小企業等とSIer間で締結することとし、SIerは必要な保守・メンテナンス体制を整備すること。
第5回(善管注意義務):システム構築費を計上する場合、発注先の事業者と3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を締結することとし、発注先の事業者は必要な保守・メンテナンス体制を整備することが必要となります。
○不正行為等に対する対応
補助金の応募申請等に関わる不正行為については、従来から厳しく対応するとの記載がありますが、第5回からさらにその記載が強化されています。
【重 要】事項に、以下の内容が追記されました。
補助金交付候補者として採択後、申請内容の確認のため証憑の提示・提出を求めることがあります。確認の結果、錯誤や虚偽・不正等、実態と相違した内容にて申請を行っていたことが発覚した際には、採択決定の取消、交付決定の取消、補助金の返還を求める場合があります。
○対象外となる事業の記載内容変更
以下の記載を追加
・将来的な対外向け販売を前提とする設備・システム等の開発を含む事業
・事業計画書に記載された経費の大半が補助対象外経費である事業
○「補助対象外となる事業者」への追記
・応募申請日を起点にして過去3年間に交付決定を合計で2回以上受けた事業者の対象補助金に、2025年以降実施されている「中小企業新事業進出補助金」も対象に加わる
○対象外経費の記載内容変更等
以下の記載を追加
・応募申請時点で計上されている経費の大半が補助対象外経費である場合は、補助事業の円滑な遂行が困難であるとして不採択になる可能性がありますのでご注意ください。
以下については、文章表現等を変更
・自社の商品(製品、システム、サービス等)の製作費、原材料費
・事業にかかる自社の人件費・旅費・交際費
・不動産(土地、建物、構築物)の取得費用、及びこれらを作り上げるための組み立て用部材の取得費用
・自動車等車両
○補助対象経費全般にわたる留意事項」の記載追加
・応募申請、交付申請及び計画変更時に申請する補助対象経費(税抜き)は、事業に要する経費(税込み)の3分の2以上であることが必要です。
○提出書類の追加
【全事業者共通(必須)】
・【指定様式】1人当たり給与支給総額の確認書 を追加
【任意書類】
・サプライチェーンを俯瞰する企業との取引実績が分かる書類(納品実績等。)
・サプライチェーンを俯瞰する企業が、サプライチェーンの省力化に広く寄与する事業計画であると認めることを証する書類
○補助事業完了後の実績報告の記載変更/追加
・補助事業に係る発明、考案等に関する知的財産等報告義務について追記
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オフィスマツナガ行政書士事務所(認定経営革新等支援機関)所長・行政書士 松永敏明
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