中堅・中小企業、そしてスタートアップ企業の経営層や経営企画担当者の皆様から熱い注目を集めている「大規模成長投資補助金」。2026年春に予定されている「第5次公募」の概要資料が、2025年12月26日に公表されました。

この大規模成長投資補助金、2025年実施の第3次は50.7%、第4次は48.6%と、いずれも大型補助金としてはとても高い採択率でした。大型設備投資を検討されている中堅・中小企業にとっては、2026年も大注目の補助金です。

今回の第5次公募では、従来の要件から投資額や賃上げ率のハードルが引き上げられるなど、より「大規模かつ抜本的な成長」を促す内容へと進化しています。
本記事では、公開された最新資料に基づき、第5次公募の概要と、これまでの第4次公募との違いを解説します。

第5次公募の概要:2026年春、公募開始予定

第5次公募の大きな目的は、人手不足に対応した省力化投資などを通じ、労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大、そして「持続的な賃上げ」を実現することです。

基本事項

補助上限額 50億円(補助率 1/3以下)
補助事業期間 交付決定日から最長で2028年12月末まで
補助対象者 中堅・中小・スタートアップ企業(従業員数2,000人以下)
補助対象事業 ①投資額20億円以上(設備投資に該当する補助対象経費分)

②賃上げ要件(従業員等1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が5.0%以上)
補助対象経費 建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費
公募開始時期 2026年春(予定)

■ 注目ポイント
第5次公募では、対象者に「スタートアップ企業」が明記され、成長意欲の高い新興企業への支援姿勢がより鮮明になっています。

4次公募と比較して何が変わった?3つの主要変更点

第4次公募と比較すると、申請のハードルや優遇措置においていくつかの重要な変更が見られます。これから準備を進める上で、特に意識すべき点は以下の3つです。

1. 投資額要件の引き上げ

第4次では「10億円以上」だった投資額要件が、第5次では原則「20億円以上」へと倍増しました。より大規模な投資計画が求められます。

  • 第4次:投資額 10億円以上
  • 第5次:投資額 20億円以上
    (※100億宣言企業は15億円以上)

2. 賃上げ要件の厳格化

求められる賃上げ率の目標も引き上げられています。従業員への還元姿勢がより強く問われる形となりました。

  • 第4次:年平均上昇率 4.5%以上
  • 第5次:年平均上昇率 5.0%以上
    (※100億宣言企業は4.5%以上)

3. 「100億宣言企業」という新カテゴリー

今回から「100億宣言企業」という枠組みが提示されています。
これは、投資額15億円以上、賃上げ率4.5%以上という、通常の枠よりも少し緩和された条件で申請できる可能性があります。
詳細内容は今後発表される公募要領を待つ必要がありますが、大規模な成長を目指す企業には大きなチャンスと言えるでしょう。

第5次公募で「採択」されやすい事例とは?

概要資料では、政策的な観点から重点化が検討されている「想定事例」が示されています。以下のいずれかに該当する計画は、採択において優遇される可能性があります。

  • スタートアップの量産投資
    革新的な製品のグローバル展開などに向けた大規模投資。
  • 地域の産業集積への貢献
    地域の産業クラスター形成に資する投資。
  • 既存跡地の活用
    土壌汚染対策を行いながら工場跡地を再利用するケース。
  • 本社機能の地方移転
    ウェルビーイングや地域活性化を伴う移転投資。
  • 金融機関との深い連携
    融資だけでなく、エクイティ(資本)面でのコミットを受けている場合。
  • 中堅企業へのスケールアップ宣言
    現在の中小企業が、事業完了後3年以内に「中堅企業」になることを宣言する場合。

経営者に求められる準備

第5次公募の審査では、単なる設備導入の計画だけでなく、「経営力」「先進性」「地域への波及効果」などが厳しく問われます。
特に、2次審査では外部有識者へのプレゼンテーションが実施されるため、経営者自らが事業の長期ビジョンを語る準備が必要です。

補助事業期間は2028年末までと比較的長く設定されていますが、2026年春の公募開始に向けて、今から「20億円以上規模の投資計画」と「5%の賃上げを実現する収益構造」を練り始めることが、採択への第一歩となります。

今後の詳細情報は、事務局のホームページ等で随時更新される予定です。乗り遅れないよう、早めの情報収集をお勧めします。

経済産業省からの公表内容はこちらをご覧ください。

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補助金の応募等に際しては、公募要領をご確認の上で、ご自身のご判断にてお願い致します。
オフィスマツナガ行政書士事務所(認定経営革新等支援機関)所長・行政書士 松永敏明