「売上100億円」への挑戦。2026年、2つの大型補助金はどう選ぶ?

2025年末、経済産業省・中小企業庁公表資料により、成長志向の高い中堅・中小企業に向けの支援パッケージの内容が明らかになりました。

キーワードは「売上高100億円」です。

今回公表された情報により、「中小企業成長加速化補助金(2次)」「中堅等大規模成長投資補助金(5次)」は、企業の投資規模に応じて明確に使い分けるべき制度であることが鮮明になりました。貴社の成長戦略にはどちらが適しているのか、最新情報に基づき解説します。

1. 2大補助金のスペック比較【最新版】

まずは、最新の公募要領・パンフレット情報を基に、2つの制度の違いを整理します。

比較項目 ① 中小企業成長加速化補助金 ② 中堅等大規模成長投資補助金
狙い 100億円超を目指す成長加速 地域経済を牽引する大規模投資
補助上限 5億円 50億円
補助率 1/2 1/3
投資額要件
(対象経費)
1億円以上 通常:20億円以上
※100億宣言企業は15億円以上
賃上げ要件
(年平均)
4.5%以上 通常:5.0%以上
※100億宣言企業は4.5%以上
対象者 売上100億円を目指す中小企業 中堅・中小企業(従業員2,000人以下)
公募時期 2次公募中、3月26日締切 5次公募、2026年春(予定)
前回公募時の採択率 1次公募:16.6% 第4次公募:48.6%

▼ ここがポイント
「100億宣言」を行うことで、②の大規模成長投資補助金における投資額要件が20億円→15億円に緩和され、賃上げ要件も5.0%→4.5%に緩和されます。これにより、2つの補助金の「投資額の谷間」がほぼ埋まり、選択肢が広がりました。

また、どちらの補助金も2026年度内に2回程度の公募が想定されますので、「100億宣言」による大規模な設備投資をご検討中の事業者様は、十分に戦略を練って臨まれることをお勧めいたします。

2. どちらを選ぶべきか?投資規模別・判断チャート

経営者の皆様が最も悩まれる「どちらに応募すべきか」について、投資計画の規模から判断基準を提示します。

ケースA:投資額が「1億円〜15億円未満」の場合

👉 迷わず「① 中小企業成長加速化補助金」を選択

  • 理由: 投資額が15億円に満たない場合、②の大規模成長投資補助金の対象外となります。
  • メリット: 補助率1/2という高い支援を受けられます。例えば10億円の投資であれば、5億円(上限額)の補助を受けられる計算になり、資金繰りへのインパクトは絶大です。
  • 注意点: 申請受付が2026年2月24日からと目前に迫っています。準備期間が短いため、早急な着手が必要です。

ケースB:投資額が「15億円以上」の場合

👉 原則、「② 中堅等大規模成長投資補助金(100億宣言枠)」を推奨

  • 理由: 「100億宣言」を行うことで、要件緩和枠(投資額15億円以上〜)を活用できます。
  • メリット: 補助率は1/3になりますが、上限が50億円と桁違いです。工場新設や物流拠点の大規模増築など、社運を賭けたプロジェクトにはこちらが適しています。
  • 比較: もし15億円の投資で①(成長加速化)を使うと、補助額は上限の5億円(実質補助率1/3)となり、②を選んだ場合と変わりません。しかし、投資額が20億、30億と増えるほど、②のメリット(上限50億円)が圧倒的に大きくなります。

3. 「100億宣言」とは何か?

両補助金の鍵となるのが「100億宣言」です。これは、経営者が「将来的に売上高100億円を目指す」というビジョンを対外的に公表することを指します。

  • 成長加速化補助金: 申請の必須要件です。
  • 大規模成長投資補助金: 必須ではありませんが、宣言することで「投資額要件の引き下げ(20億→15億)」「賃上げ要件の緩和(5.0%→4.5%)」という優遇措置を活用することができます。

4. 2026年のスケジュール戦略

パンフレット等の資料によると、両補助金ともに2026年の早い段階で動きがあります。

1. 中小企業成長加速化補助金(2次)
  • 公募期間: 2026年2月24日受付開始、 3月26日(木)15時公募締切
  • 採択発表: 2026年5月下旬(予定)
  • ポイント: 既に公募要領は公開されています。「GビズID」の取得や事業計画の策定を今すぐ始める必要があります。
2. 中堅等大規模成長投資補助金(5次)
  • 公募開始: 2026年春(予定)
  • ポイント: 成長加速化補助金の申請締切前後から動き出すと予想されます。前回公募時の資料等を参考にした準備をお奨めします。

5. 応募にあたっての重要リスク

両補助金とも、「賃上げ」に対して非常に厳しいコミットメントを求めています。

  • ■ 未達成時の返還義務
    補助事業終了後3年間の賃上げ目標(年率4.5%以上など)を達成できなかった場合、補助金の返還が求められます(天災などを除く)。
  • ■ 全従業員への表明
    申請時や交付決定までに、賃上げ計画を全従業員に表明する必要があります。絵に描いた餅ではなく、実現可能な経営計画としての裏付けが不可欠です。

補助金ナビ編集部より

今回の2つの補助金は、企業のステージを一気に引き上げる「起爆剤」となり得ます。
選択の分かれ目は「投資額15億円」のラインです。

  • 15億円未満なら、補助率1/2の「成長加速化補助金」で足場を固める。
  • 15億円以上なら、上限50億円の「大規模成長投資補助金」で一気に攻める。

どちらを選ぶにせよ、金融機関との連携や、「100億宣言」をベースにした数年先を見越した緻密な事業計画が採択の鍵を握ります。

掲載したニュース等の内容は正確を期すように努めておりますが、その内容について正確性を保証するものではありません。
補助金の応募等に際しては、公募要領をご確認の上で、ご自身のご判断にてお願い致します。
オフィスマツナガ行政書士事務所(認定経営革新等支援機関)所長・行政書士 松永敏明